リスク対策.COMという2ヶ月に1回発行のBCP専門の雑誌がありま
す。(http://risk-t.com/)この中の対談「BCPは金融危機に通用し
ないのか」について要約とコメントをします。
対談者は、Lyndon Bird 氏(事業継続経営の世界的な普及啓発
に取り組んでいる非営利団体BCI:本部英国:テクニカルサービス
ディレクター)と篠原雅道氏(BCI日本支部代表でインターリスク
総研研究開発部リーダー)。
テーマは「事業継続マネジメント(BCM Business Continuity
Management)が最も進んでいたと考えられる金融業が、大手証券会
社リーマン・ブラザーズに象徴されるように相次いで経営の危機に
陥った。BCPは金融危機には通用しないのか。そして世界、日本は
今後どのようなBCMを構築していけばいいのか」
ポイント要約
Lyndon Bird 氏
「ビジネスは世界の中で動いている。
各国がつながっている中で、それぞれが事業継続というものに共
通認識を持ち、世界的なスタンダードを構築してく必要がある」
世界におけるハザードやリスクが国別によって相違している現状
に対して、Lyndon Bird 氏の回答:
「ローカルでもとめられるBCMと世界のスタンダードをすり併せて
いくための戦略をつくっていくことが我々のミッション。(世界的
なスタンダードとしてはBSI:英国規格協会:がBS25999-2を発表し、
各国で認証事例が増えている)」
結果事象からBCPを考えることの大切さについて、篠原氏の回答:
「実際には多くの人が地震は起きないと考えている。あまりにも大
きな惨事を引き起こす故に、現実的に考えようとしないのが実情。
しかし、冷静になって地震が起きたことを考えれば、会社に入れ
なくなる、人がいなくなる、システムが使えなくなる。取引先が機
能しなくなるなど。これらが結果事象と呼ばれるもの」
筆者(尾崎)注:
全ての社員・スタッフには、業務を処理するためのリソース(経
営資源・業務遂行資源)が常に「そこにあること」を前提とする意
識が働いています。こうした意識は多くの「想定外の事態」を生み
出す原因となります。
インプット(受け入れ)、プロセス(業務遂行)、アウトプット
(成果物・仕事の結果の引渡し)という3つの要素に含まれるリソ
ースに対し「こうなっては困る」、「これでは業務が行えない」と
いう状況を描き出すことで被害が想定できます。
この被害想定をすることがリスクマネジメントの基本となります。
したがって、「会社に入れなくなる、人がいなくなる、システムが
使えなくなる。取引先が機能しなくなる」などの、結果事象と呼ば
れるものの被害想定は、原因がなんであれ、とても重要となります。
篠原氏の追加発言:
「限られた経営資源の中でどのように事業を継続するのか、これを
突き詰めていけば、異なる脅威に対してでも共通して取り組める対
策は出てくる。
人が出社できないときの事業継続の手法は、地震に限らず新型イ
ンフルエンザでも同様に機能し得る。まずは、こうした結果事象の
視点でBCPやBCMの策定を進めたらいいのではないか」
Lyndon Bird 氏の追加発言:
「現実的にはすべてのリスクを想定することは不可能。
だからこそ、地震という脅威によって何が引き起こるのか結果事
象を見ることが重要。
例えば、一匹の猫が目の前の水溜りを濡れないように慎重に渡ろ
うとしているとしよう。猫は水溜りに気をとられているが、周囲に
は何匹もの大きな犬が猫に襲いかかろうとしていて、猫は犬のこと
にまったく気づいていない。
この猫にしてみれば、水に濡れることは大したリスクではなく、
むしろ、犬に襲われることのほうが命にかかわるリスクなのだが、
そのことに気づいていないのだ。
さらに重要なポイントは、猫にとってみれば、その中のどの犬に
襲われようが、結果的に命を落とすことには変わりが無い。ここで
いう犬こそ、地震や、テロ、台風、など企業を取り巻く脅威といえ
る。
つまり、どの犬に襲われるかを考えるより、どの犬に襲われても、
いかにその場から逃げるかを考えることが重要」
筆者(尾崎)注:
Lyndon Bird 氏の猫における「水溜りと犬」の喩え話は、BCPを
考える上でとても象徴的で今後私もリスクマネジメントの話をする
ときに活用したいと思いました。
ハザード・脅威・リスクの見極めが経営におけるリスクマネジメ
ントの出発点であり、基本かと思います。
そしていよいよ本題「結果事象の考えから事業継続をしっかり考
えていれば、今回の金融危機も回避することはできたのでしょうか」
という質問が出てきます。
この回答と、回答に対する私のコメントは次回発信します。