仙台リスクマネジメント(HR-RM) Human Philosophy-Risk Management

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「生き残これる判断 生き残れない判断行動--大災害・テロの生存者たちの証言で判明」

The Unthinkable Who survives when disaster strikes--and Why

著者 Amanda Ripley : 「タイム」誌のシニアライター。

ワシントンD.C.で国土安全保障とリスクに関する記事を執筆中。 

ハリケーン「カトリーナ」と「リタ」に関する彼女の報道で、「タイム」誌は全米雑誌賞を二つ受賞した。

 訳 岡 真知子 光文社 ¥2310

 

著者覚書

 

災害を再現するにあたって、生存者が与えてくれる希望は、この上なく大きい。


災害の概要だけでなく、匂いや音、自然に発生した親切までも再現してくれるのだ。

彼らのごく普通の記憶や恐ろしい記憶は、未知の世界への入り口となる。


災害時の人間行動を真剣に研究したものは数少ないことを認めざるをえない。

研究資金も不足しており、災害への不安がピークに達した際の研究が少数あるだけだ。


最終的に、生存者の記憶は、研究者の調査結果と同様に、誤りを免れないことを心に留めておくように読者にお願いしなければならない。

人間行動についての著作は、そこに描写する複雑な状況を免除するものではない。


生存者たちに私は心底から感謝している。

ばかげだ質問にも答えてくれる、彼らの忍耐力と寛大さには頭が下がった。
本書は、神経科学者からパイロットの指導教官、警察心理学者といった専門家の知識に頼っている。

彼らは自分たちの知識を何百時間もかけて私にも理解できる言葉で説明してくれた。

書評

公明新聞4/19-2010-梯 久美子さん(ノンフィクション作家)

 「いざというとき自分の命を守るための教訓に満ちているだけでなく、人間とは何かを掘り下げたドキュメンタリ-である。


生命が危険にさらされる事態に直面したとき、人はどんな行動をとるのか。生死を分けるポイントは何なのか。気鋭の女性ジャーナリストが、実際に起こった大災害の経験者に取材を重ねて考察している。


生還者たちが語る経験は意外性に富む。9・11のテロに遭遇した人たちは、すぐに避難しようとしなかった。衝突の衝撃でビルが揺れる中、コンピュターを終了させ、何人もに電話をかけ、私物をまとめた。ほとんどの人が助かる行動を起こすのを先延ばしにしたのだ


階段を使っての避難が整然と行われたことはよく知られている。誰も急ぐ人はいなかったが、それは落ち着いていたからではなく、災害に遭遇した人がたどる第一段階である「否認」の状態にあったと著者はいう。


何も危険なことは起こっていないと自分に思いこませようとするのだ。それはしばしば致命的な結果を招くという。 続く第2段階の「思考」で人はショックから回復し、大3段階の「決定的瞬間」で生死を分ける行動にでる。

 
著者はハリケ-ン「カトリーナ」、バージニア工科大学の銃乱射事件をはじめ、数多くの事例を引きつつ人間行動と心理を解き明かしていく。
当事者へのインタビューや専門家への聞き取りだけでなく、航空機墜落や火災の模擬体験までやってのける行動力は天晴れというしかない。


徹底した取材から浮かび上がってくるのは、人間という存在の不思議さと偉大さだ。極限状況の中で、赤の他人を救うために命を賭ける人々がいるという事実。その心理の分析も著者は試みている。


書評 2:本書帯記載:広瀬弘忠氏(東京女子大教授)-「災害やテロの全体像をつかみ、その時に何をなすべきかを知るうえで、ぜひ一読を勧めたいダイナミズムあふれた本である」


書評 3:本書帯記載:江上剛氏(作家)「本書の魅力は、何といっても被災者たちの体験が臨場感たっぷりに描かれていることだ。それは教訓に満ちており、実際、私は、ホテルに宿泊する際、必ず非常口を確認するようになった」

訳者 岡 真知子氏 あとがき

 

 「9・11」2001年。その日、ビルにいて事件に巻き込まれた人達は、何を目撃し、何を考え、どいういう行動をとっただろう?

 

世界貿易センタービルから2千人あまりの社員を無事に避難させた警備主任もいた。 彼は人々を避難させた後、妻に電話し

て感謝の気持ちを伝え、別れを告げて、ふたたび危険なビルの中に戻っていったという。


九死に一生を得てなんとかビルから脱出した人もいれば、不幸にして命を落とした人々もいる。生死を分けたのは何だった

のか?   

幸運にも生き残った人たちは、どのようにして惨事を免れたのだろう?あの衝撃的事件から数年の時を経て、生存者たち

はどういう思いで日々を送っているのだろう。


2005年8月ハリケ-ン「カトリーナ」がニュ-オリオンズに襲来した時、市長による避難命令が出されていたにもかかわらず、そこにとどま

って死亡した住民がいたのはなぜなのか?


1982年1月13日、エア・フロリダ旅客機が厳寒のポトマック川に墜落した時、身の危険を冒して凍りつくほど冷たい川に飛び込ん

だ板金工がいた。


ヘリコプターも飛び立てないほどの悪天候の中、絶望の淵に沈みかけていた墜落機の乗客達は、彼の姿を目にして一縷の望

みを抱いた。


凍え死にそうな思いまでして、なぜその板金工は彼らを救おうとしたのだろう?見ず知らずの他人のために、自らの命を賭

してまで、人はなぜこうした行動がとれるのだろう?

 

著者は、こうしたさまざまな惨事をくぐり抜けて生き延びた人達を証人として訪ね、長時間にわたって(なかには3年、あるい

は5年に及んだ例もある)インタビューし、一人ひとりの言葉に真摯に耳を傾けた。


著者は公式報告書や関連書籍やメディアの記事など、広範囲な資料を確かめて客観性を保持するべく努めている。しかも信

頼できる情報を得るために、インタビューには一切謝礼を払わないというジャーナリストとしての姿勢を貫いている。

 

一方で、本書は一種のサバイバルガイドにもなっている。惨事に直面した時、私達の脳はどう働くのかを解明し、生き延びる為

に何をしなければならないのかについて具体的にアドバイスしてくれる。


脳を鍛える方法や恐怖を抑制するための呼吸法などにも触れていて実際的でもある。


惨事に遭遇し、恐怖に直面した人達び反応や行動は、私達の予想を裏切る。「現実はもっと興味深く、希望に満ちている」の

である。


極度の恐怖を体験した生存者達の語りといい、極限状況において崇高な行動をとることができる人間の感動的な実話といい、

人間の奥深さを再認識させてくれる感銘深い書となっている。


本書の原題「The Unthinkable 」は、「想像もできないほどの惨事」を意味すると同時に、人間には、はかり知れないほど素晴

らしい存在である、という意味も含めているのではないだろうか。